円形脱毛症とは、何の前触れなく、髪の毛が抜け落ちる皮膚病です。人口の1〜2%がかかると言われており、日本人全体で120〜240万人の患者がいることになります。男女ともにかかりやすい脱毛症です。
これって円形脱毛症?円形脱毛症になったようだけど、どうすればいいの?治るの?など、気になるトピックについて徹底調査しました。
円形脱毛症とは
円形脱毛症(えんけいだつもうしょう)は、円形または楕円形の脱毛が特徴の自己免疫疾患です。通常、頭皮や顔、体の他の部分に突然、毛が抜け落ちることがあります。脱毛は通常は限局的で、周囲の健康な毛髪に影響を与えることはありません。
円形脱毛症の種類
最も多い症状。円形の脱毛が1カ所に現れる。自分では気づきにくく、美容院などで指摘されてることも多い。治療をしなくてもいつの間にか治っていることも多く、実は多くの人は一生で1〜2回なっているかもしれない。昔は10円ハゲと言われていた。 |
円形の脱毛が2カ所以上にできる。自分では1カ所だけだと思っていても、気づきにくい場所にも脱毛があり、実は多発型だったというケースもある。2〜3個で治る場合もあるが、10個近くできてくると、隣の脱毛斑とくっ付いて、大きな脱毛斑になってしまうこともある。学校生活や日常・社会生活に影響が出始める。 |
多発型の脱毛が頭皮全体に広がり、頭髪が丸ごと脱毛する。多発型から徐々に拡大して頭全体に及ぶ場合と、短期間のうちに急激に頭全体が脱毛する場合がある。さらに、まつ毛や眉毛、ヒゲ、鼻毛が抜けてしまうことも珍しくない。 |
最重症型。頭部のみならず、腋毛、陰毛、腕や足の毛、胸毛など体中の毛が全て抜けおちる。男女問わず、幼稚園児から高齢者まで、誰でもなる。ステロイド外用薬や初期治療に用いられる内服薬などの効果がみられないことがほとんど。 |
首筋やおでこ、耳の周りなど生え際を中心に脱毛する。ステロイド薬の局所注射など、やや踏み込んだ治療が必要になる。 |
極めて稀の症状。頭頂部が脱毛し生え際が残るような毛の落ち方。 |
数週間から数か月の間に、頭皮全体にびまん性の脱毛が急激に進行する。程なく自然に回復することが多く、治療後や時間の経過とともに再び髪が生えそろうことが期待できる。 |
円形脱毛症の原因
Tリンパ球の異常
ストレスとの関係が言われることもありますが、実は科学的な根拠は今のところありません。現在分かっているのは、自分の毛根を敵と勘違いし、リンパ球が毛根を攻撃する自己免疫疾患の一種であるということ。
免疫とは、自分以外の細菌やウイルスなどが侵入してきた時に、それを「敵」だとして攻撃・排除する仕組みです。しかし自己免疫疾患では、正常な自分自身の細胞を「敵」だと誤認して、攻撃してしまいます。
円形脱毛症では、白血球の一種で細菌やウイルスを攻撃するTリンパ球に異常が起きて、毛乳頭などの正常な細胞を攻撃してしまいます。
遺伝的要素
さらに近年、その発生には遺伝的な要素が深く関わっていることが明らかになってきました。中でもヒト白血球型抗原(HLA)と呼ばれる遺伝子領域に異変があると、円形脱毛症を起こしやすいと分かってきました。HLAには非常に多くの型があり、特に全頭型や汎発型の多くには特定のHLAの型(HLA-DB1*0301)が深く関わっていると言われています。
家族に円形脱毛症の人がいる場合、発症するリスクが高まることがあります。
トリガー要素
円形脱毛症は主にTリンパ球の異常と遺伝的影響によって引き起こされることが分かりましたが、それらを引き起こすきっかけ(トリガー)があります。
- ストレス: 精神的または身体的なストレスがトリガーとなり、脱毛が起こることがあります。
- ホルモンの変化: 特に妊娠や出産、思春期、更年期など、ホルモンバランスの変化が影響することがあります。
- 感染症: 一部のウイルスや細菌感染が、円形脱毛症の発症に関与している可能性があります。
- アレルギー反応: 特定の物質に対するアレルギーが、脱毛の原因となることがあります。
- 栄養不足: ビタミンやミネラルが不足すると、髪の健康が損なわれ、脱毛につながることがあります。
- 環境要因: 一部の化学物質や環境汚染が、髪に悪影響を及ぼすことがあります。
上記の要素は、直接的には円形脱毛症の原因とはされていませんが、原因のきっかけを作る要因として留意してください。
円形脱毛症の初期症状
円形脱毛症の初期症状には一般的に以下のような特徴があります。
突然の髪の脱落
最も顕著な初期症状は、頭皮の一部で突然髪が抜け始めます。円形、もしくは楕円形のはげた部分ができることが多く、通常は痛みやかゆみがないことが多いです。 |
脱毛範囲の局所性
初期段階では、はげた部分は1~2か所に限られることが一般的です。小さなコイン状のはげが突然現れることがあります。 |
頭皮の見た目は健康
脱毛部分の頭皮は、一般的に健康な見た目で、赤みや炎症はほとんど見られません。皮膚がツルツルしていて光沢がある場合もあります。 |
爪の変化
一部の人では、脱毛に加えて爪に凹凸や細かい線が現れることがあります。これは円形脱毛症に関連する症状の一つです。 |
まつげや眉毛の脱毛
円形脱毛症が進行すると、頭髪だけでなく、まつげや眉毛、体毛にも脱毛が見られることがあります。 |
円形脱毛症を1つ見つけたら、他にもないか調べてみましょう。単発型は自然治癒することが多いのでご自身で経過観察するとよいかと思います。複数の円形脱毛症に気づいた場合は、早めに皮膚科を受診することが重要ですね。
円形脱毛症で白髪が増える?
円形脱毛症では脱毛部に白髪が生えくることで治ったり、黒い毛ばかりが抜けて白髪ばかりが残ってしまったり、はたまた脱毛した箇所の皮膚が白くなったりすることがあります。このことから、円形脱毛症はメラニン色素と関係があるとされています。
脱毛後に生える髪が白髪になる
円形脱毛症によって毛根がダメージを受けると、メラノサイト(髪の色素を生成する細胞)も影響を受けることがあります。その結果、色素の生成が低下し、毛が再生した際に白髪として生えてくることがあります。これは、一時的な現象で、メラノサイトが回復すれば再び色のついた髪が生えることもあります。
円形脱毛症になると白髪になる?
髪の色を決定するメラニン色素を生成する細胞メラノサイトは、自己免疫反応に影響を受けやすい細胞であるとされています。このためメラニン色素が少ない白髪は、メラニン色素が多い黒い髪と比べて、自己免疫反応の攻撃を受けにくくなります。すると黒い毛ばかりが抜けて、白髪が残り、相対的に白髪が目立つようになります。
皮膚にある色素細胞が自己免疫反応の対象となる場合は、皮膚が白くなります。白斑と呼ばれる現象です。
犬も円形脱毛症になる?
実は犬も円形脱毛症になることがあります。ただし、犬の円形脱毛症の原因は人間と異なるケースが多いようです。
犬の脱毛症 主な症状
- 円形や楕円形の脱毛:
- 毛が抜け落ちて丸いハゲができるのが特徴です。大きさや数は様々ですが、特に頭部、首、胴体、足などにできやすいです。
- 痒みや痛みがほとんどない:
- 多くの場合、犬は痒みや痛みを感じずに脱毛が進行しますが、皮膚の状態によっては少し赤みが出たり、炎症が見られることもあります。
- 毛が抜ける以外に皮膚の異常はほとんどない:
- 脱毛した部分にフケやかさぶたが見られることもありますが、多くの場合は皮膚が比較的健康な状態です。
- 進行速度や範囲が異なる:
- 急激に脱毛することもあれば、ゆっくりと進行する場合があります。また数カ所から数十カ所に広がることもあります。
犬の脱毛症 主な原因
自己免疫疾患
免疫系が自分の毛包(毛根部分)を攻撃し、毛が抜けてしまうことがあります。自己免疫性疾患は、特に特定の犬種で遺伝的に発生しやすいです。
アレルギー
食物や環境に対するアレルギーが原因で脱毛が生じることがあります。かゆみが伴うことも多く、かきむしることでさらに悪化します。
ホルモン異常
甲状腺機能低下症やクッシング症候群などの内分泌疾患が原因で脱毛が進むこともあります。
ストレス
ストレスや不安も犬に影響を与え、脱毛症の原因となることがありますが、人間と比べると影響は限定的です。
感染症
真菌(カビ)、細菌、寄生虫(ノミやダニなど)による感染も脱毛の原因です。
もし愛犬が円形脱毛症になったら苦しいですよね…犬の円形脱毛症の治療は、原因に応じて異なります。疑わしい症状がある場合は、獣医師による診断と治療を受けることが大切です。
円形脱毛症になったら、何科に行ったらいいの?
皮膚科
円形脱毛症は皮膚の疾患の一種ですので、皮膚科で取り扱われています。まずは皮膚科に行きましょう。
美容皮膚科
美容的な観点からも相談したい場合、美容皮膚科でも対応可能です。特に治療法や育毛に関しての相談ができるでしょう。
頭髪専門クリニック/脱毛症専門クリニック
円形脱毛症に特化した治療を行うクリニックもあります。こうしたクリニックでは、より専門的な治療やカウンセリングが受けられる場合があります。
円形脱毛症は見た目で診断されることが多いようです。医師が所見してステロイド外用薬を渡されて診察が終わったなど…。それを使用して改善がみられれば良いのですが、中には他の疾患との区別がつきにくい症例もあるようです。皮膚科によっては「ダーモスコピー」という医療用の拡大鏡のようなもので観察してくれるクリニックや、それでも診断が付きにくい場合は皮膚の生検(直径4~5mmくらいの皮膚を局所麻酔した状態でくり抜く)を行うクリニックもあります。
円形脱毛症の治療と薬
円形脱毛症の治療は様々なものがあり、患者の年齢や病変部の範囲、病気が急性か慢性かで治療が方針が変わります。一番多い単発型や多発型の治療法は、「局所免疫法」と「ステロイド療法」が一般的ですが、その他にも多数あります。2022年からは新たに承認された「経口JAK阻害剤」も期待されています。一体それそれどんな治療なのか、概要をまとめてみました。
外用 (塗り薬や皮膚に直接アプローチする治療) | 内服 (飲み薬) | ||
B2:局所免疫療法 | A1:経口JAK阻害剤 | ||
B1~B2:ステロイド療法 | |||
C2:カルプロニウム塩化物 | B2:抗ヒスタミン剤 | ||
C2~C3:ミノキシジル | C2:セファランチン | ||
B2:冷却療法 | C2:グリチルリチン,グリシン,メチオニン配合錠 | ||
B2:紫外線療法 |
(出典:円形脱毛症診療ガイドライン 2024)
*日本皮膚科学会が示す円形脱毛症治療の推奨度は、以下のような段階に分けられています
<エビデンスレベルの分類>
- A:(高い)結果はほぼ確実であり,新たに研究が行われても結果が大きく変わる可能性が低い
- B:(低い)結果を支持する研究はあるが十分ではなく,新たに研究が行われた場合に結果が大きく変わる可能性がある
- C:(とても低い)結論を支持する質の高い研究がない
<推奨度の強さ>
- 1:強い推奨 推奨された治療により得られる利益が大きく,かつ,それによる負担を上回るため行うよう勧める
- 2:弱い推奨 推奨された治療により得られる利益の大きさや有効性・安全性は不確実である,あるいは治療によって生じうる害や負担と拮抗していると考えられる
- 3:推奨しない 判断の根拠となる情報の普遍性に乏しい,あるいは治療法が本邦の医療体制にそぐわないなどの理由から,現時点では勧められない
局所免疫療法(外用)
脱毛部位に軽いかぶれを起こしながら治していく治療法です。1978年にアメリカで提唱されて、30年以上の歴史があります。意図的にアレルギー反応を起こすことで自己免疫の異常な反応(毛包への攻撃)を抑制することで、発毛を促進する効果が期待されます。
SADBEやDPCPという化学物質を使用しますが、これらは医薬品ではなく、病院内で薬剤師の管理のもと「院内製剤」として使用されることが多いようです。これを病変部に塗布すると、かなり高い確率でかぶれが起きます。治療中に頭皮以外の部位がかぶれたり、首や頭のリンパ腺が腫れたりしたり、アトピー性皮膚炎を持っている人は、その皮膚症状が悪化することもあります。しかし概ね安全性が高く、肝臓や腎臓機能に影響を及ぼすような重大な副作用はありません。
単発型や多発型に対する効果が高く、7割程度の人に効果があったという報告もあります。外用しているうちに頭皮に色素沈着などが現れた場合には、あまり効果が期待できないサインなので、他の治療法を検討する必要があります。
ステロイド療法
外用薬・局所注射・点滴・内服の4つの種類があり、まずは外用薬を投与して経過を観察します。
急速に進行する症例では点滴を用いたり、期間を決めて内服薬を用いた治療を検討します。局所注射の選択肢もありますが、脱毛が広範囲に及ぶ場合は注射の回数も増えることから、その他の治療と併用するのが一般的です。
原則として子どもへのステロイド局所注射・点滴・内服は行いません。
1.外用薬
- 概要:ステロイド外用薬(軟膏やクリーム)を脱毛部位に直接塗布する治療法です。軽度から中程度の円形脱毛症に適応されることが多いです。
- 効果:ステロイドの抗炎症作用で、自己免疫反応による炎症を抑え、発毛を促進します。治療効果は個人差があり、約3〜6ヶ月の継続使用が一般的です。
- 副作用:長期間使用すると皮膚が薄くなる「皮膚萎縮」や、血管が透けて見える「毛細血管拡張」、皮膚の色素沈着などが起こる可能性があります。
2.局所注射
- 概要:ステロイド薬を脱毛部位に直接注射する方法です。比較的小さな範囲の脱毛症や、より集中的な治療が必要なケースに用いられます。1回の注射で薬が行き渡るのは1㎠程度であるため、脱毛範囲が広ければ1回の診察での注射回数が増えてしまいます。
- 効果:直接患部に注射するため、効果が現れやすく、1~2ヶ月程度で発毛の兆候が見られることもあります。3~4週間に一度のペースで治療を行うことが多いです。
- 副作用:注射部位に痛みが出ることがあります。また、短期間に注射を繰り返すと皮膚が凹む「皮膚萎縮」や「色素脱失」(色素の薄い斑点ができる)などが見られることがあります。
3.点滴
- 概要:ステロイドを点滴で体内に投与する治療法で、重症例や急速に進行する場合に選択されることがあります。点滴療法は一般的に3〜4日ほど入院して行われます。
- 効果:体内での抗炎症効果を発揮し、自己免疫反応を抑制します。多発型円形脱毛症や全頭型・全身型に対して行われることが多いですが、急速に進行する症状を一時的に緩和するために使用されます。
- 副作用:むくみや血圧の上昇、感染症リスクの増加、胃腸障害、骨粗しょう症などが挙げられます。副作用のリスクが高いため、慎重に経過観察が必要です。
4.内服
- 概要:ステロイド薬を経口で服用する方法です。点滴療法と同様、重症例や多発型、全頭型・全身型の円形脱毛症に対して使用されます。
- 効果:体内での自己免疫反応の抑制と炎症の軽減を目指します。通常、数ヶ月の服用期間が必要であり、効果が出るまで時間がかかることもあります。
- 副作用:副作用は点滴療法と同様に、むくみ、血圧上昇、体重増加、骨粗しょう症、糖尿病などがリスクとして考えられます。また、急に服用を中止すると「離脱症状」(リバウンド現象)を引き起こすことがあるため、医師の指導に従って減量していきます。
経口JAK阻害剤(内服)
免疫システムの異常な働きを抑える薬を内服する治療法。AK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤は、JAKファミリーの酵素(JAK1, JAK2, JAK3, TYK2)を抑制することで、免疫システムの過剰な活動を抑えます。JAK酵素は、細胞内でシグナル伝達の重要な役割を果たしており、炎症反応や免疫反応の誘導に関わるサイトカイン(免疫細胞が分泌するタンパク質)の働きを調整しています。JAK阻害剤は、特定のサイトカインのシグナル伝達をブロックし、免疫系が毛包を攻撃するのを防ぐことで脱毛の進行を抑える効果が期待されています。
これまで国内では保険適用外でしたが、多くの研究でJAK阻害剤の効果が確認されており、毛髪の再生や脱毛範囲の縮小が期待できるため、2022年にJAK1/2阻害薬(バリシチニブ)が重症円形脱毛症に適応追加されました。これに続いて2023年9月には、新たにJAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬(リトレシチニブ)が重症円形脱毛症に保険適用のある新規薬剤として販売開始となりました。JAK阻害剤免疫抑制効果を持つため、感染症やその他の免疫関連の副作用のリスクもあるため、治療中は定期的な血液検査や医師の診察が必要とされます。
抗ヒスタミン薬(内服)
抗ヒスタミン剤には免疫反応をある程度抑える作用があり、これにより毛包への過剰な攻撃が減る可能性があります。さらに脱毛部位にかゆみや炎症を伴う場合、抗ヒスタミン剤はこれらの症状を和らげる役割も果たします。アトピー性皮膚炎合併症例にアトピー素因の改善効果を期待して併用されることが多いようです。
セファランチン(内服)
セラファチンは日本の漢方薬由来の化合物で、東洋医学で使われていた植物「アステルナチョウメイソウ(Stephania cephalantha)」の根から抽出されます。セラファチンには免疫調整作用があるため、過剰な免疫反応を抑え、毛根が攻撃されるのを防ぎます。また、血流改善する効果も持ち合わせており、毛包(毛の成長部分)への栄養供給をサポートする働きが期待されます。さらに炎症反応を抑える作用もあり、頭皮の炎症を軽減し、毛根の健康を保つことも期待されます。
グリチルリチン,グリシン,メチオニン配合錠(内服)
グリチルリチン、グリシン、メチオニン配合の錠剤は、皮膚の健康を維持し、毛髪再生をサポートするための補助的な治療法として処方されます。ただし、円形脱毛症の進行や原因によっては、ステロイドや免疫抑制薬などの他の治療法と併用されることが多いです。
- グリチルリチン
グリチルリチン酸は甘草由来の成分で、抗炎症作用や免疫調整作用があり、皮膚や毛根に生じた炎症を和らげ、脱毛の進行を抑える効果が期待されます。また、円形脱毛症は自己免疫疾患としての側面もあるため、グリチルリチンの作用が有用とされています。 - グリシン
グリシンはアミノ酸の一種で、皮膚や毛髪の主要成分であるコラーゲンの合成に関与しています。これにより、頭皮の健康を改善し、髪の成長をサポートすることが期待されます。また、グリシンには抗酸化作用もあるため、細胞の酸化ダメージを軽減し、毛髪の健康を保つ助けになります。 - メチオニン
メチオニンは必須アミノ酸の一種で、毛髪を構成するケラチンの合成に重要な役割を果たします。メチオニンの摂取は、髪の強度や健康を維持し、脱毛の予防や改善に役立つ可能性があります。また、メチオニンは体内の代謝や解毒作用を助け、頭皮環境を良好に保つサポートも期待されています。
カルプロニウム塩化物(外用)
カルプロニウム塩化物(商品名として「フロジン液」など)は、血行を促進し、毛包の働きを活発にするための外用薬です。脱毛症に対する治療の歴史が長く、市販の発毛促進薬にも配合されることが多い薬剤です。
カルプロニウム塩化物は液体状の外用薬で、医師の指示に従って1日1回~数回、脱毛した部分に塗布します。通常、数カ月間の継続使用が必要で、脱毛症の進行が落ち着いてきた場合、発毛が見られることがあります。ただし、カルプロニウム塩化物単独の効果は限られるため、他の治療法(ステロイド外用薬、局所免疫療法など)と併用することが多いようです。
ミノキシジル(外用)
ミノキシジルには血流を改善し、毛包を活性化する作用があるため、毛髪の成長をサポートする目的で使用されます。市販の育毛剤に配合されているものもあります。効果が現れるまでには3~6か月かかることが多く、継続的な使用が推奨されます。カルプロニウム塩化物同様、単独使用の効果は限られるため、他の治療法との併用が推奨されています。
発毛剤としてよく知られるミノキシジルですが、円形脱毛症において内服の治療効果は、十分な根拠があるとは言えません。ミノキシジル内服に伴い動悸、頻脈、浮腫、顔面の多毛などの副作用が出現する可能性があることなどから、内服は行いません。
冷却療法
氷や液体窒素などの冷却物質を頭皮に適用して、脱毛を抑えたり再発毛を促進したりすることを目的とした治療法です。冷却によって頭皮に一時的な炎症や刺激を与え、免疫系の反応を調節することで、自己免疫による毛根への攻撃を緩和させることが期待されています。
- 液体窒素療法
液体窒素(通常は-196℃)を用いて、円形脱毛症のある部分に冷却刺激を与えます。治療者が患部に直接冷却剤を塗布したり、短時間押し当てたりすることで、局所的な凍傷状態を一時的に引き起こし、免疫細胞の活動を抑制する狙いがあります。 - 冷却ジェルやパック
自宅で行える冷却療法として、冷却ジェルや冷却パックを使用する方法もあります。こちらは液体窒素療法ほどの強力な刺激ではありませんが、軽度の症状や補助的なケアとして用いられることがあります。
紫外線療法(PUVA 療法・エキシマライト/レーザー・narrow-band UVB 療法)
紫外線を照射して免疫の働きを調整し、髪の再生を促進する治療方法です。紫外線は免疫系に働きかけ、炎症を抑えたり、毛包(毛根の周りの組織)に刺激を与えたりすることで、脱毛部位の毛の再生をサポートします。
1. PUVA療法
- 概要: 皮膚に光感受性物質である「ソラレン(psoralen)」を塗布し、紫外線A(UVA)を照射する方法です。光感受性物質が紫外線を吸収し、免疫反応を抑制する効果を高めます。
- 効果: 重度の円形脱毛症や長期的な脱毛症例に対して有効とされています。UVAは皮膚の奥深くまで届くため、毛根に直接影響を与えやすいとされています。
- デメリット: 照射に痛みを伴う場合があります。またソラレンの副作用として、皮膚炎や光老化のリスクが高まる場合があります。
2. NBUVB療法(ナローバンドUVB)
- 概要: 特定の波長の紫外線B(UVB)を照射する治療法です。波長が狭く、副作用が少ないとされています。PUVA療法と異なり、光感受性物質を使わず、比較的低いリスクで照射できます。
- 効果: 軽度~中等度の円形脱毛症に効果的です。特に副作用のリスクが低いため、長期間の治療に適しています。
- デメリット.: 効果の現れ方には個人差があり、治療に一定の時間を要する場合があります。
3. Excimer(エキシマ)ライト療法
- 概要: 波長308nmのエキシマ光(紫外線B)を局所的に照射する方法で、主に限局性の脱毛症に使用されます。
- 効果: 照射部位のみを対象にできるため、周囲の健康な皮膚に影響を与えにくく、円形脱毛症の小範囲の治療に適しています。
- デメリット: 照射範囲が狭いため、広範囲の脱毛には不向きです。また、照射頻度が高いと皮膚刺激が増える可能性があります。
とてもたくさんの治療法がありますね。どの治療法が自分の体質に合うのか、自分の脱毛症に合うのかは、正直試してみないと分からないです。そのため、保険が効く治療なのかや、きちんと相談できる医師に巡り合えるかが大切そうですね。
円形脱毛症の治療って保険適用されるの?
円形脱毛症の治療は、2020年4月より保険が適用されました。ただし保険が適用される治療法と適用されない治療法がありますので注意してください。事前にかかる皮膚科やクリニックに確認することをおすすめします。
治療法 | 保険適用の有無 | 理由 |
---|---|---|
局所免疫療法 | × | かぶれを引き起こすために使用されるSADBEやDPCPという化学物質は医薬品として定義されていないため。 |
ステロイド療法 | ◯ | 自己免疫疾患の治療として保険が適用される。 |
経口JAK阻害剤 | ◯ | 2022年にバリシチニブ、2023年にリトレシチニブの使用に保険が適用されるようになった。 |
抗ヒスタミン薬(内服) | × | 円形脱毛症治療においては現状十分な効果が実証されていないため保険適用外。 |
セファランチン(内服) | ◯ | 自己免疫疾患の治療として保険が適用される。 |
グリチルリチン(内服) | ◯ | 自己免疫疾患の治療として保険が適用される。 |
塩化カルプロニウム(外用) | ◯ | 自己免疫疾患の治療として保険が適用される。 |
ミノキシジル(外用) | × | 円形脱毛症治療においては現状十分な効果が実証されていないため保険適用外。 |
冷却療法 | × | 皮膚には保険適用になるが、円形脱毛症治療においては現状十分な効果が実証されていないため保険適用外。 |
紫外線療法 | △ | 2020年にNBUVB療法とエキシマライト/レーザー療法については保険適用となった。しかしUVA療法は保険適用外のままのようです。 |
円形脱毛症と向き合うために
他の脱毛症と同様、円形脱毛症の治療にはある程度期間が必要であることが分かりましたね。そして精神的な負担を感じやすいので、最初に冷静に対応することが大切だと感じました。
1. 専門医の受診
まずは皮膚科や専門医に相談して、円形脱毛症の種類や進行状況を確認しましょう。早めに診断を受けることで、効果的な治療法を早く始めることができます。
2. 治療法を理解する
- 円形脱毛症にはいくつかの治療法がありますが、すぐに効果が現れるわけではありません。医師と相談し、長期的な視点で治療プランを組み立てましょう。
- 外用薬、内服薬、注射、照射などがありますが、症状の進行状況や個人差に応じた対応が求められます。
3. セルフケアと生活習慣
- ストレス管理や睡眠、食事など、健康的な生活習慣を心がけることで、体の回復力をサポートできます。
- 特にストレスは脱毛症に影響する可能性があるため、リラックス法や運動を取り入れて心身のバランスを保ちましょう。
4. 他の人の体験を知る
円形脱毛症は比較的多くの人が経験する症状です。コミュニティやサポートグループに参加し、他の人の体験やアドバイスを聞くことで孤独感が軽減され、前向きな気持ちで向き合いやすくなります。
5. ポジティブな心構えを保つ
- 症状の改善には時間がかかることが多いですが、円形脱毛症は回復する可能性が十分にあります。
- 鏡を見るときも、治療の過程を一つひとつ積み重ねている自分を褒めてあげましょう。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。最近ではyoutubeなんかでも、脱毛症を発信している方がおり、こちらも勇気をもらいます。ぜひ色々検索してみてください。
円形脱毛症になったかもと心配している方、円形脱毛症になったようだけど、どうすればいいのか分からないという方に、少しでも参考になれば幸いです!
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