AGAとFAGAのメカニズムを知って正しい対策を

毛髪とブラシ

これまでヘアトニックやヘッドマッサージなどによる髪への効果について記事にしてきましたが、その中で「AGA(男性型脱毛症)による薄毛はヘアトニックやヘッドマッサージではどうにもならない」という事を折に触れていました。そこで今回はAGA・ FAGA(女性男性型脱毛症)について詳しく調査してみました。

最近髪が痩せてきた、抜け毛が多くなってきた、何をやっても抜け毛が止まらない…という方の参考になれば幸いです。

目次

毛髪の仕組みを知る

本題に入る前に、まずは毛髪がどのような仕組みになっているかを見ていきます。

髪の毛とは

私たちが普段「髪の毛」と呼んでいる毛髪は、皮膚から出ている部分「毛幹」と、皮膚に埋まっている部分「毛根」からなります。この皮膚に埋まっている毛幹を包んでいる組織を「毛包」と言います。毛包は体を覆う皮膚という器官に付属する人体最小の器官です。

毛乳頭細胞と毛母細胞

毛包の一番深いところには「毛球」という膨らみがあります。そして毛球の一番下に「毛乳頭」というくぼみがあります。毛乳頭の中で活動している細胞を「毛乳頭細胞」と呼びます。さらに毛乳頭をぐるりと囲むように「毛母細胞」が存在します。毛母細胞は周囲の毛細血管から酸素と栄養を受け取り毛髪を作っています。毛母細胞が活動を続けることで、毛髪は下から上に押し上げられるように成長していきます。毛乳頭細胞がこの毛母細胞に活動するよう指令を出しています。

バルジ(ヘアバルジ/毛隆起)領域

バルジ」とは英語のbulgeのことで、出っ張りとか膨らみという意味があります。毛包の真ん中より少し上の部分にある膨らみのことです。ここには立毛筋という筋肉がついています。立毛筋は毛髪を約40〜45度の傾きで支える、自分の意思では動かせない筋肉です。寒い時や驚いた時に鳥肌が立つのは、神経が興奮してこの立毛筋を収縮して、毛包を盛り起こすためです。

バルジ領域には毛包幹細胞色素幹細胞という2種類の幹細胞の基地があります。毛包幹細胞は毛包を作る細胞で、毛球に毛母細胞を供給しています。一方、色素幹細胞はメラノサイト(色素形成細胞)を作る細胞です。メラノサイトはメラニン色素を形成し、髪の色を決めます。

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メラノサイトが作ったメラニン色素は、隣り合う毛母細胞へと渡され、それによって髪の毛に色がつきます。メラニン色素には2種類あって、一つはユーメラニン(黒褐色系)、もう一つはフェオメラニン(黄赤色系)です。ユーメラニンが多く、メ
ラニン色素の総量が多いと黒髪に、メラニン色素の総量が少ないと金髪になるそうです。ユーメラニンもフェオメラニンもほとんど含まなくなると白髪になります。

ヘアサイクルを知る

続いて、ヘアサイクルについても知っておく必要があります。

ヘアサイクル(毛周期)

毛髪は1日におよそ0.3mmほど伸び、あるところまで伸びると自然に抜け落ちます。そしてしばらくすると抜け落ちたところから新しい髪の毛が生えてきます。このサイクルのことをヘアサイクル(毛周期)と呼びます。

成長期

毛包が上から下に伸びて、毛母細胞が分裂と増殖を繰り返す期間です。ヘアサイクルにおける90%ほどがこの成長期で、およそ2〜6年続きます。

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例えば、成長期が5年続いたとすると、髪の毛の長さは55cmくらいになるんですね。

退行期

毛包の萎縮が始まります。毛母細胞の成長にブレーキをかけ、完全に成長が停止するまでの期間です。ヘアサイクルにおいて1〜2%ほどが退行期で、一般的には2〜3週間ほど続きます。

毛包の萎縮が始まる
毛包が完全に退化

休止期

毛母細胞の活動が全く止まっている期間です。毛包がバルジ領域くらいまで萎縮して、刺激でも髪の毛が抜け落ちる状態です。休止期はヘアサイクルにおいておよそ10%くらいで、数ヶ月続きます。その後、毛包幹細胞が活動を再開すると、毛包が下に伸びていき、再び成長期になります。

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毛包によってヘアサイクルは異なります。成長期が2年で終わる毛包もあれば、成長期が6年続く毛包もあります。このため髪の毛が抜け落ちるタイミングは揃わず、髪の毛のボリュームは一定に保たれているのですね。

AGA(男性型脱毛症)のメカニズム

ついに本題です。AGAとは英語のAndrogenetic Alopecia(アンドロジェネティック・アロペシア)の略で「エィ・ジィ・エィ」と読みます。男性ホルモンの働きや遺伝によって、主に思春期以降の成人男性に生じる脱毛症のことです。

AGAのカギ:男性ホルモンのテストステロンとジヒドロテストステロン

1. テストステロンがジヒドロテストステロンに変化

男性ホルモンの代表格であるテストステロンは、血液に乗って全身を循環しています。そして特定のホルモンを受け止めるアンテナを持つ組織にだけ作用します。このアンテナのことを受容体(レセプター)と言います。

テストステロンが毛包の毛乳頭細胞まで運ばれると、5αリダクターゼ(5α還元酵素)という物質により、より強力なジヒドロテストステロンという男性ホルモンに変化します。そして毛乳頭細胞にはこのジヒドロテストステロンをキャッチする受容体(アンドロゲンレセプター)が備わっています。

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5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があって、前頭部や頭頂部などの毛乳頭細胞ではⅡ型5αリダクターゼが特に関連しています。

Ⅰ型は前立腺や大部分の皮膚の皮脂腺、AGAが起こりにくい側頭部や後頭部に多く存在し、皮脂の分泌量を活性化させる働きがあります。ニキビのできやすい脂っぽい人に多く見られます。

Ⅱ型は前立腺と前頭部や頭頂部に多く存在します。体毛や髭が濃い人に多く見られます。

2. サイトカインが毛母細胞の死滅を引き起こす

毛乳頭細胞の受容体(アンドロゲンレセプター)にジヒドロテストステロンが合体すると、毛乳頭細胞はTGF-βDKK1というサイトカインを出します。サイトカインとは細胞から分泌されるタンパク質で情報伝達の役割を果たしています。TGF-βやDKK1は別名 脱毛司令因子とも呼ばれています。この毛乳頭細胞からの脱毛司令因子のサイトカインが毛母細胞の受容体にキャッチされると、細胞自然死(アポトーシス)が引き起こされます。アポトーシスとは、細胞が構成している組織をより良い状態に保つため、細胞自体に組み込まれたプログラムであり、必要な現象です。

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AGAによる脱毛のタイプにはM字型(額の両側を剃り込んだように後退する脱毛)とU字型(額全体が後退する脱毛)と、O字型(頭頂部の脱毛)があります。これはアンドロゲンレセプターがおでこの生え際・前頭部・頭頂部の毛乳頭細胞に多く存在するためです。逆に側頭部と後頭部、ヒゲにはアンドロゲンセレプターが存在しないと言われれいます。
またアンドロゲンレセプターの感受性の高い・低いは遺伝の影響が大きいとされています。

AGAのヘアサイクル

毛母細胞でアポトーシスが過剰に引き起こされると、正常なヘアサイクルが乱れます。通常は2〜6年続く成長期が、AGAにおいては数ヶ月から1年ほどになります。毛髪が太く長く成長する前に退行期になり、休止期に入って脱毛が起こります。

AGAは早期発見・早期治療!主な有効成分

AGAは男性ホルモンによって引き起こされるため、何らかの医学的治療をしない限り、どんどん進行していきます。どんなに髪にいいことをしても、どんなに良い生活習慣を身につけたとしても、止められないのがAGAなのです。

ほとんどの人は、成長期の毛髪が全体の60%以上を占めている間は、薄毛を自覚できないそうです。周囲や自分が薄毛に気づくようになるのは、成長期の毛髪が全体の30〜40%まで減ってからです。

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つまり気づいた時には、すでに半分以上AGAが進行していることが多いんですね…

AGAの救世主 フィナステリド(内服)

フィナステリドは元々前立腺肥大の抑制に有効だとしてアメリカで使用されていました。ところが多くの患者に投与して効果や副作用を確認する過程でAGAの改善にも有効だとわかりました。そして1997年にアメリカでAGA治療成分として認可されました。それまで育毛・発毛剤は頭皮に直接つける薬でしたが、フィナステリドは世界で初めて登場した「飲む」発毛剤です。商品名はプロペシアです。日本では2005年にAGAの薬として認可され、処方箋が必要になります。ちなみにフィナステリドは日本では前立腺肥大の治療成分としては認可されていません。

フィナステリドがAGAに作用する仕組み

フィナステリドは、テストステロンジヒドロテストステロンに転換するのを阻害します。毛乳頭細胞にジヒドロテストステロンがなければアンドロゲンレセプターと合体しません。つまりサイトカインを放出することもなくなるのです。

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フィナステリドは、頭頂部や側頭部の毛乳頭細胞に多く存在するⅡ型5αリダクターゼを阻害することが分かっています。

フィナステリドは女性や未成年男性には使用できない

フィナステリドはAGAのメカニズムに対して直接アプローチできる成分です。しかし有効性と安全性が確認されているのは、成人男性のAGAのみです。閉経後の女性型脱毛症の患者を対象とした試験では、有効性がなかったという結果があります。女性の脱毛症には効果は期待できません。

特に妊婦・妊娠している可能性がある女性、授乳中の女性には絶対に使用できません。AGAにおいてはジヒドロテストステロンは悪ですが、男性の成長には欠かせないホルモンでもあります。フィナステリドは男の子胎児や男の子の生育に悪影響を及ぼすため、このような女性には禁忌(きんき)です。そして同じ理由で、成長期にいる未成年の男の子にも使用できません。

デュタステリド(内服)

フィナステリドの他に、デュタステリドという成分がAGA治療として、日本では2015年に認可されました。AGAに作用する仕組みはフィナステリドと同じです。そのため、女性や未成年男性には使用できません。デュタステリドは前立腺肥大を抑える成分としても認可されています。こちらも処方箋が必要なお薬です。

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前立腺肥大もAGAと同じメカニズムで起きます。前立腺内の5αリダクターゼが生成したジヒドロテストステロンが、前立腺の細胞を増殖させ肥大が起きます。

Ⅱ型5αリダクターゼを阻害するのがフィナステリドですが、デュタステリドはⅠ型Ⅱ型も阻害する働きがあります。

ミノキシジル

ミノキシジルは高血圧の飲み薬として開発されました。ところがミノキシジル服用中の人に多毛が見受けられたことから、AGAに対する薬として開発が進みました。アメリカで1986年認可され、日本では1999年に発売されました。ミノキシジルは外用薬で、つまりは塗り薬です。内服のミノキシジルは、処方箋が必要です。

ミノキシジルには優れた育毛効果が確認されており、副作用も少ないです。しかしなぜ薄毛に効くのかは未だ全貌がわかっていないようです。現状確認されている育毛に対する主な作用は、

  • 血管を緩めて拡張させる作用(頭皮の血行が良くなる)
  • 細胞成長因子の産出促進
  • 成長期の毛包が増加し、休止期の毛包が減少
  • 細胞にあるカリウムチャンネルという物質の通り道を開き、毛母細胞の増殖を促す
  • テストステロンをはじめとする男性ホルモンのレセプターに結合し、その働きを抑える

などです。フィナステリドやデュタステリドとは効き目のメカニズムが異なるので、併用する人が大半のようです。そしてミノキシジルは女性でも使用できますし、外用薬として市販品もあります。

代表的な商品:大正製薬「リアップ」「リアップリジェンヌ」

その他の外用薬

アデノシン

アデノシンは体内でエネルギーを運んだり、シグナル伝達に関わっています。発毛促進因子の産生、毛根の成長期の延長、血行促進という効果が期待できます。

代表的な商品:資生堂 「薬用アデノゲンEX」薬用アデノゲン グレイシィ

カルプロニウム塩化物

カルプロニウム塩化物は、頭皮や毛根の血液循環を促進する働きがあります。

代表的な商品:第一三共ヘルスケア「フロジン外用液5%」

t-フラバノン

t-フラバノンは主に3つの育毛作用があります。1)毛包の退行期への移行にブレーキをかけて成長期を保つ。2)毛母細胞の分裂と増殖を促す。3)毛根の接着分子を増やし抜け毛を防ぐ。花王が2000種以上の生薬ライブラリーから見つけた成分です。

代表的な商品:花王サクセスバイタルチャージ薬用育毛剤

サイトプリンおよびペンタデカン

この2つの成分は、細胞内のタンパク質に働きかけます。サイトプリンは髪の成長に必要なタンパク質の生成を促し、発毛促進シグナルを増やします。またペンタデカンは髪のもととなるケラチンの合成に必要なエネルギーを共有します。

代表的な商品:ライオン薬用毛髪力イノベート

ケトコナゾール

ケトコナゾールはもともと抗真菌薬で、脂漏性皮膚炎の改善に使用されていました。近年はジヒドロテストステロンの合成を抑制する働きもあると考えられています。国内では、育毛剤としては認可されていません。

赤色ナローバンドLED

LEDの一種である赤色ナローバンドLEDに高い育毛・発毛効果が期待できることが近年判明しました。毛髪に関わる毛乳頭細胞は皮膚の下6mmくらいの深いところにあります。赤色ナローバンドLEDは波長が長く、皮膚の深いところまで浸透する性質があります。その結果、毛髪の成長期を長くするHGF、成長期を維持するレプチン、毛包を大きくするVEGF-Aといったさまざまな成長因子が増えることが確認できたのです。

赤色ナローバンドLEDは、体への負担が少なく、頭皮にあてても肌がじんわり暖かくなる程度。痛みもなく、もちろん日焼けもしません。

高輝度赤色LEDを搭載したヘッドスパ.:NIPLUX「EMS HEAD SPA PREMIUM

AGAは早期発見・早期治療が大切なワケ

このように薄毛の薬は種類も増え、有効性も信頼できるものが増えてきています。しかしフィナステリドやミノキシジルの一般的な効果は、太くて長い成長期の毛髪の割合を最大20〜30%増やすくらい。つまり成長期の毛髪の割合が50%を下回ってから治療を始めても、100%元の状態には戻らないのです。どんな病気もそうですが、毛髪のおいても早期発見・早期治療が大切なのです。

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家系に薄毛が多いとか、薄毛になるかもしれない事が気になる方なら、毎日自分の毛髪の状態をチェックするのがいいでしょう。スマホで1ヶ月ごとに撮影すれば、自覚できていなくても、写真を見比べることで薄毛に気づくことができると思います。もし薄くなっていると感じたなら、早めにAGAを扱うクリニックを受診してみてください。

女性のAGAと女性型脱毛症

AGAは基本的に男性における脱毛症のことです。しかし中には女性なのに男性型脱毛症にかかる人もいます。 AGAの前に”Femel”をつけた Female Androgenetic Alopeciaは 、女性男性型脱毛症と呼ばれます。 FAGAは「ファーガ」と読みます。

女性にも男性ホルモンは存在する

女性ホルモンの代表格は、エストロゲンとプロゲステロン。しかし体内には男性ホルモンであるテストステロンも分泌されています。テストステロンは精巣で合成されますが、女性においては卵巣や副腎などで合成されています。

閉経以前はエストロゲンとプロゲステロンが多く分泌されているため、テストステロンの働きが抑えられています。閉経後にエストロゲンとプロゲステロンの分泌が減ると、相対的にテストステロンの作用が強く出るようになり、 FAGAが起こりやすくなります。

男性ではテストステロンジヒドロテストステロンに転化する5αリダクターゼの所在が明らかになっていますが、女性の毛包における5αリダクターゼアンドロゲンレセプターの所在は明らかではありません。そのため FAGAのメカニズムはまだ明確ではありません。

FAGAの症状

AGAと同じように前頭部はえ際やM字の薄毛が見られます。抜け毛の中に、短くて細い毛が多くなってきた場合は、 FAGAが疑われます。また発症時期は男性の20代以降に対して、女性の場合30歳前後から、さらに高年であることが一般的です。父親がAGAの方の中には、出産後脱毛を契機に FAGAが進行することがあることも知られています。女性ホルモンの分泌が著しく変化する更年期前後でも FAGAが目立つことがありますが、加齢に伴う薄毛との判別が難しく、区別しないで治療することが一般的です。

診断が難しい FAGA

更年期女性に、数年かけて前頭部はえ際から耳前部にかけて数センチ幅の帯状に脱毛する脱毛があります。これは「毛孔性扁平苔癬(もうこうせいへんぺいたいせん)」という慢性的な皮膚炎に属します。毛根の幹細胞の領域まで障害されるため、回復することがありません。前頭部のはえ際が後退することから FAGAや円形脱毛症の一種と誤って診断されることがあります。

女性のAGA= FAGA≠女性型脱毛症(FPHL)

女性にも起こるAGAを FAGAと言いましたが、女性の脱毛症はAGAのメカニズムだけでは説明できない部分も多いとされています。 FAGAではない女性型脱毛症はAGAと区別して、FPHL( Female Pattern Hair Loss)と呼ばれています。女性の薄毛のおよそ半分がEPHL(エフピーエイチエル)とされています。

一般的に日本人女性のFPHLでは40歳頃から始まります。頭部中央の毛髪密度が均等に低下していきます。AGEは頭頂部や生え際など、一部から薄毛が進行して全体に広がるのが特徴です。それに対してFAGEは、一部ではなく全体的に薄くなるのが特徴です。この状態をびまん性脱毛とも言います。

慢性休止期脱毛症

女性の薄毛でFPHLに次いで多いのが慢性休止脱毛症と言われるものです。

本来は10%ほどの休止期の頭髪の割合が、20%ほどまで増加します。その結果長くて硬い毛髪の抜け毛が増えていきます。AGAやEPHLとは異なり、頭部全体に脱毛が起こります。

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AGAも休止期脱毛の一種ですが、女性に多い慢性休止期脱毛症は男性ホルモンのテストステロンは関与しておらず、詳しい原因はいまだに不明だそうです… 治療法の一つとしてミノキシジルが使用できます。

育毛・発毛の環境を整える

このように最近はAGAに対して画期的な薬がたくさん出てきています。しかしだからと言って他は何もしなくても良いという訳ではありません。治療は薬だけではありません。日頃から体と頭皮の環境を整えることも非常に大切です。性別年齢関係なく言えることなので、ぜひ参考にしてみてください。

バランスの取れた食生活

特定の栄養素だけが育毛や発毛に良いとは言えません。逆に足りない栄養素があると育毛や発毛に良くありません。

タンパク質

私たちの体は60〜70%の水分と、約20%のタンパク質、約15%の脂質、約5%のミネラルでできています。毛髪のもとになるケラチンもタンパク質です。タンパク質の不足は髪にも体にも絶対よくありません。

タンパク質は 20種類のアミノ酸から成ります。そのうち9種類は体内で合成できない必須アミノ酸です。つまり食べ物から毎日摂取する必要があるのです。肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆製品をバランスよく摂取する必要があります。

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人間の体は生命維持のために、髪よりも臓器を優先して栄養を運ぶため、薄毛に悩んでいる方はたんぱく質を意識して摂取するといいと思います。タンパク質の摂取量は年齢や性別などによって異なるため、自分にどれくらい必要なのか一度調べてみることをおすすめします!

ビタミンとミネラル

ビタミンはそれ自体にエネルギーはありません。エネルギー源となる三大栄養素(タンパク質・炭水化物・脂質)の働きをサポートする体にとって大切な栄養素です。13種類ありますが、一部を除いて体内でつくることができません。やはり食べ物などで外部から摂取しないと必要量を確保することができません。ここでは髪によいとされるビタミン・ミネラルを挙げてみました。

ビタミン
ビタミンA
豚肉、鶏肉、あゆ、うなぎ、イカ、タラ、にんじん、しそなど
新陳代謝を促進し髪の健康を維持する。不足すると皮膚が乾燥しやすく、毛穴が角化しやすくなる。
ビタミンB1
豚肉、ごま、大豆、落花生、ナッツ類、たらこ、焼き海苔、いんげんなど
糖質の代謝を促進し、疲労回復に効果的。不足すると、胃腸障害から頭皮の局部脂漏の原因となる。
ビタミンB2
豚・牛・鶏レバー、白鮭、焼きのり、卵、牛乳など
髪の成長や細胞の再生をサポートする、脂質を代謝する。
ビタミンB6
パセリ、ピスタチオ、マグロ、バナナ、じゃがいも、ケール、大豆など
亜鉛のはたらきをサポートしてケラチンの合成を促す。
ビタミンH(ビオチン)
卵黄、舞茸、レバー、落花生、焼き海苔、アーモンド、ヘーゼルナッツなど
毛包内の毛母細胞の増殖を促進することで、毛髪の成長を助ける。アミノ酸代謝の促進する。
ビタミンC
ブロッコリー、キウイ、レモン、オレンジ、イチゴ、ゆず、赤ピーマン、柿など
頭皮を良い状態に整え、髪にハリやツヤを与えるコラーゲンの生成をサポートするのにも必要な栄養素。亜鉛や鉄などのミネラルの吸収を助ける役割もあるので、ミネラルを摂取する際には一緒に摂ると良い。
ビタミンE
アーモンド、大豆、卵黄、オリーブ油、ひまわり油、アボカド、かぼちゃなど
体内の血流を促進するはたらきがあるため、毛細血管を広げて髪に栄養がスムーズに届くようにサポートしてくれる。また、抗酸化作用があり、細胞や血管の健康を維持し老化を予防することにも役立つ栄養素。
ミネラル
葉酸
ブロッコリー、枝豆、なばな、モロヘイヤ、芽キャベツ、アルパラガスなど
ビタミンB12とともに新しい血液を作り出す。ビタミンB12と葉酸はDNAの増殖にも関わり、毛母細胞の細胞分裂を促す。

豚レバー、鶏レバー、牛肉、カツオ、さんま、大豆製品、焼きのり、小松菜など
血液中の赤血球に必要なヘモグロビンの材料となるため、鉄不足によってヘモグロビンの生成が低下すると、酸素の運搬が滞り、体は酸素不足に。体が酸欠状態になると、髪の毛にも影響。髪は毛根の中央に位置する毛乳頭が、毛細血管から酸素や栄養分を吸収することで、健康な状態を維持しているが、体内の酸素が不足すると、十分な酸素や栄養が毛乳頭まで行き渡らなくなってしまう。加えて、鉄はコラーゲンの合成においても必要な栄養素。コラーゲンは皮膚だけでなく、髪の毛にも含まれており、髪の健康をキープするには欠かない。
亜鉛
牡蠣、豚レバー、牛肉、納豆、カシューナッツ、アーモンド、豆腐など
ケラチンを作るときに欠かせない栄養素。亜鉛にはタンパク質の合成を支えるはたらきがあるとされている。髪のキューティクルの内側に補われ、髪の毛にハリやコシをもたらすと考えられている。
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こうして挙げてみると、栄養素は相互に作用しているので、これだけ摂ってれば大丈夫!という栄養素はありませんね。逆に特定の栄養素ばかり摂ると他に不具合が出ることも…。バランスの取れた食事を心がけることが大切ですね。筆者はあすけんアプリで毎日の食事をチェックしています。

頭皮マッサージ

毛髪の成長に大切な毛乳頭細胞と毛母細胞の活動には、多くの血液が必要です。しかし頭皮の筋肉が凝り固まると血流が悪くなって、細胞の活動に必要な血液を届けることができません。薄毛だけでなく白髪の問題にも影響してきます。頭皮マッサージの効果は1日にして成らず。毎日少しずつで構わないので、日課にして続けることをおすすめします。顔のたるみにも効果的ですよ。

シャンプーにも気を遣う

ラウリル硫酸ナトリウムという洗浄成分を聞いたことがありますか?非常に強い洗浄力を持つため頭皮と毛髪によくないと聞いたことがあるかも知れません。それよりもラウリル硫酸ナトリウムには、タンパク質を変質する働きがあり、髪表面のキューティクルにダメージを与えるという点の方が深刻なのです。キューティクルが壊れると髪の毛が細くなり、薄毛がより気になるようになります。

頭を洗うとは「頭皮を洗うこと」だと思っています。爪を立てずにしっかりと頭皮を洗うようにしてください。

なるべく自然のものを使用する

筆者は完全オーガニック派ではありません。しかし経皮毒を考え、なるべく不要なものが入っていないものを選ぶようにしています。一説には頭皮は腕の皮膚よりも3.5倍も化学物質を吸収しやすいと言われています。これは頭皮の毛穴が体の中で一番大きな毛穴だからでしょう。口から吸収した添加物や残留農薬は、正しい食生活を送っていれば肝臓で解毒されておよそ90%は体外に排出されます。しかし皮膚から吸収した化学物質は体外に排出されにくく蓄積することが分かっています。シャンプーだけでなく、頭皮や頭髪に塗るヘアケア製品についても考えてみてください。

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経皮毒は科学的根拠がないとされていますが、実際に洗濯洗剤や柔軟剤をきっかけに化学物質過敏症を引き起こしてしまう人もいます。口に入れるものだけでなく、日常的に体に触れるものにも気を遣いたいですね。

カラーリングやパーマはほどほどに

カラー剤が、直接的に薄毛の原因となることはないと言われています。しかし頭皮の環境を悪化させたり、髪の毛にダメージを与えたりすることで薄毛を引き起こす恐れがあるのです。

カラーリング

ヘアカラーの仕組みは、アルカリ物質が無理やり髪を膨潤させ、有効成分である酸化染料と過酸化水素を髪の中に浸透させます。過酸化水素は、メラニンを脱色するとともに、髪に浸透した染料を酸化します。染料は酸化されると結合して発色します。

ヘアカラーに使用される過酸化水素やアンモニア、ジアミン(酸化染料)はアレルギーを引き起こしやすい物質でもす。頻繁にカラーリングを行う場合、頭皮へのダメージが蓄積します。また頭皮に成分が残留することで、毛穴を詰まりも引き起こりやすくなります。

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市販のカラーリング剤には発色を良くするためにジアミンや過酸化水素が多く配合されていることが多いので、ヘアカラーする際は美容院に行くことをおすすめします。美容院によってはボタニカルカラーやヘナ、イルミナカラーなど過酸化水素が入っていないものを使用できるところもあるので、頭皮や毛髪に存在するアミノ酸やタンパク質、酵素が破壊されることなく、ダメージを最小限に抑えることができます!

パーマ

パーマは髪にボリュームを持たせることができるので、薄毛世代にはお馴染みです。しかしやはり強いアルカリ性物質を使用しているため弱酸性の頭皮には良くありません。また、キューティクルを破壊させるので、内部のコルテックスという毛皮質が流出し、髪が痩せたような感じになります。頻繁にパーマをかけるのはおすすめしません。

紫外線を浴びせない

紫外線(UV)には、UV-AUV-BUV-Cの3種類あります。

UV-A紫外線の約95%を占める。しわ、たるみの原因。髪の毛やお肌の内部(真皮)まで入り込み、ダメージを与える
UV-B紫外線の約5%を占める。日焼けの原因。髪の毛やお肌の表面(表皮)を傷つける
UV-C体に害をもたらす危険なUV(紫外線)。ただし、地表には到達せずオゾン層でほぼ吸収される

毛髪に与える影響

UV-Aは髪の毛の内部まで入り込みます。すると髪の主成分であるタンパク質がダメージを受け、髪柔軟性が失われてしまいます。これによって水分保持力が低下し乾燥、ごわつきの原因になります。またメラニン色素やヘアカラー色素を壊す性質もあります。するとヘアカラーの褪色を引き起こしやすくなります。さらに、髪の毛の表面にある脂質被膜が酸化し、水をはじく機能が失われ、滑らかさ低下。キューティクルが剥がれやすくなるため、ツヤもなくなります。

頭皮に与える影響

UV-Aは、頭皮の真皮までも到達します。毛母細胞や毛包幹細胞に損傷を与え、抜け毛や薄毛を誘発・促進する原因になります。さらに紫外線は頭皮を乾燥させ、水分不足を引き起こす。 乾燥した頭皮は健康な状態を保つために栄養や水分の供給が減り、毛根が十分な栄養や水分を受け取ることができず、髪の成長が妨げられます。

髪は顔の2倍の紫外線を浴びていると言われています。毛髪用日焼け止めスプレーや帽子、日傘などでしっかり紫外線から守りましょう。

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帽子による頭の蒸れが気になる方も多いと思います。確かに帽子の被りっぱなしで、頭皮が圧迫されて血行が悪くなったり、通気が悪くなって蒸れて清潔な環境が保てなくなることがあります。でも帽子は1時間1回とって頭に風を通してあげるだけでも蒸れを防ぐことができます。それよりも帽子を被らないことで紫外線を浴びる方が毛髪と頭皮にはよくないです!

お酒ほどほどに

アルコールは肝臓で分解されますが、この時亜鉛が消費されます。アルコールを摂り過ぎると亜鉛が不足し、髪に必要なタンパク質の生成が妨げられます。また、アルコールを分解する際に発生するアセトアルデヒは、血液中の栄養や酵素を押しのけてしまう性質を持つため、髪の毛に悪い影響を与えるとも言われています。

メンタルケア

私たちの体には、体を活動時に整える交感神経と、リラックスモードへ導く副交感神経があります。いずれも自律神経で意識的な努力を必要とせず、自動的(自律的)に機能するのが特徴です。

ストレスを感じると交感神経が優位になります。交感神経は心身を緊張させ血管を収縮させる働きがあり、ストレスの状態が長く続くと血行が悪くなる可能性があります。つまり頭皮に流れる血流も悪くしてしまうのです。

さらに薄毛を自覚することでまたストレスを抱えるという悪循環に陥らないためにも、先述した育毛・発毛のためにできることを実践し、早めにクリニックにかかることをおすすめします。

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ちなみにマウスの実験では、ストレスを与えられたマウスの毛包の成長が止まり、ヘアサイクルが休止期に入って、脱毛が起こるとが分かっています。

またストレスは、薄毛だけでなく白髪の要因にもなるとされています。ストレスによって交感神経が過剰に活性化すると、ノルアドレナリンという神経伝達物質が大量に放出されます。ノルアドレナリンは、メラノサイトのもとになるバルジ領域の色素幹細胞を過度に活性化させます。つまり色素幹細胞とメラノサイトを浪費することになり、やがてメラニン色素の合成が滞って、白髪が増えるのです。

最後に。薄毛を恥ずかしがらないで!

髪の毛の印象は、その人の印象を左右するほど絶大。今やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)に関わってくるともされています。AGAによる薄毛、加齢による薄毛、原因不明の薄毛…薄毛にも色々なケースがあることが分かりました。ただ、一つ言えることは薄毛は誰にでも起こりうること!です。

まず大前提として、男でも女でも薄毛の人がダメだとは全く思っていません。そんなことよりも髪を含めた身だしなみや清潔感を整えていることの方が大切です。髪ボサボサで小汚い人よりも、少ない髪でもきちんと揃って整えられて、清潔な人の方がいいです。

ただ薄毛問題がご自身のQOLに関わっていると思うのなら、何かしら手を打つべきです。まだ若いからクリニックに行くのは恥ずかしいとか思わないで欲しいです。だって薄毛は誰にでも起こりますから。早めに対処すれば、それだけいい結果が得られるはずです。

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筆者には子供が二人いますが、毛髪と頭皮に良いとされる習慣を植え付けています。そしてどんな自分でも自信を持つことの大切さも。それでももし将来薄毛に悩む時が来たら、母として迷わずクリニックを勧めます!

ここまでお付き合いいただきありがとうございました!薄毛でお悩みの方に少しでも役立てれば幸いです。

参考:AGA治療革命、https://answers.ten-navi.com/、https://kunitachi-clinic.com/、https://www.tamanoi.co.jp/、日本化粧品工業会、薄毛の化学

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