アラフィフにさしかかり、髪の毛事情が気になっています。加齢とともに白髪、毛の痩せ細り、乾燥などなど悩みが尽きません。シャンプーにこだわったり、頭皮マッサージをしたり、食事に気をつけたり、運動したり…やれることはやっていますが、白髪も薄毛も完全には避けられない。誰にでも起きるんです。
そこで今回は女性の薄毛・抜け毛について徹底調査してみました。筆者のように髪の悩みが尽きない方、今はまだ大丈夫だけど将来心配…そんな方々の参考になれば幸いです。
見た目の9割は髪で決まる
なかなかセンセーショナルな表題です。が、実際にこのような題名の本が存在します。ご自身の周りにでも芸能人でも、髪型が変わっただけでグッと垢抜けた人っていませんか?決して美人とかハンサムとかいう類ではないのに、ショートカットにしたら急にかわいくなったとか。そういう人っていますよね。実は人間の見た目印象に一番影響するのは、顔ではなく髪型だと言われています。
後ろ姿で髪パサパサの人がいて、追い越してみたら私より20歳くらい若そうな人で驚いたことがあります。後ろ姿は年齢が出やすいですよね。特に後ろからは顔が見えないから、余計に髪や姿勢に目がいっちゃうかも…
ちなみに、「人は見た目が9割」という本も存在します。こちらの本は、見た目や第一印象が人間関係やコミュニケーションに与える影響について考察した本です。最近問題にもなっている外見至上主義の話ではなく、第一印象がいかに重要で、見た目の効果やファッション、表情、姿勢などが、どのように相手に影響を与えるかを具体的な例や心理学的なデータを交えて説明しています。これから社会人になる方におすすめです。
一方、「見た目の9割は髪で決まる」の本では、髪の印象がその人の見た目の良し悪しに直接影響するとし、いかに髪を綺麗に保ち、自分に似合う髪型を見つけるかが重要だと書かれています。
それほど大切な髪の毛。全く外見を気にしない人を除けば、薄毛はQOL(クオリティ・オブ・ライフ)に関わってくる重大な問題なのです。
女性の薄毛の種類と原因は?
女性の薄毛の原因は多岐にわたります。ここでは症状別に7つに分類しました。
1. びまん性脱毛症・慢性休止期脱毛症
症状
髪全体が薄くなり、脱毛部分とそうでない部分の境界線がはっきりしないのが特徴です。女性の薄毛で最も多いタイプです。「びまん」とは「一面に広がる」という意味で、男性のように部分的に脱毛が進むのではなく、頭皮全体が薄くなります。初期症状としては、短い髪が多くなってきた、髪のボリュームが減った、分け目が薄くなった、地肌が透けて見える、髪が大量に抜ける、髪が細くなった、ヘアスタイルが決まらなくなったなどが挙げられます。
一日に数百~数千本の髪の毛が抜けるなど急速に進む事例はかなり少なく、一般的には「気が付いたら以前より薄くなっている」というケースが大半です。進行スピードに関しては個人差があります。
原因
毛の成長が止まって、いつ抜けてもよい状態の毛髪が増えるため。休止期は正常な場合、頭髪の5〜10%において、3ヶ月ほど続きます。しかし休止期が3ヶ月以上になったり、成長期から急に休止期に移行したり、休止期から成長期に戻らなかったりすることで、脱毛の発生や、穏やかに毛の密度が低下する変化が起きるため。
老化、ストレス、極端なダイエット、誤ったヘアケアなど。原因がひとつではなく、複数が複雑に絡み合っていることが多い。
2. 女性男性型脱毛症( FAGA)
症状
AGAと同じように前頭部はえ際やM字型様に薄毛が広がっていきます。抜け毛の中に、短くて細い毛が多くなってきた場合は、 FAGA(Femal + AGA= FAGAファーガ)が疑われます。FAGAは年齢から起こる「びまん性脱毛症」の1つです。
原因
女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)。しかし体内には男性ホルモンであるテストステロンも分泌されています。テストステロンは精巣で合成されますが、女性においては卵巣や副腎などで合成されています。
閉経以前はエストロゲンとプロゲステロンが多く分泌されているため、テストステロンの働きが抑えられています。閉経後にエストロゲンとプロゲステロンの分泌が減ると、相対的にテストステロンの作用が強く出るようになり、 FAGAが起こりやすくなります。
しかし、男性ではテストステロンをジヒドロテストステロンに転化する5αリダクターゼの所在が明らかになっていますが、女性の毛包における5αリダクターゼやアンドロゲンレセプターの所在は明らかではありません。そのため FAGAのメカニズムはまだ明確ではありません。
3. 円形脱毛症
症状
何の前触れなく、髪の毛が抜け落ちる皮膚病。人口の1〜2%が罹ると言われており、日本人全体で120〜240万人の患者がいることになります。男女ともに罹りやすい脱毛症です。
原因
ストレスとの関係が言われることもありますが、科学的な根拠は今のところありません。現在分かっているのは、自分の毛根を敵と勘違いし、リンパ球が毛根を攻撃する自己免疫疾患の一種であるということ。
免疫とは、自分以外の細菌やウイルスなどが侵入してきた時に、それを「敵」だとして攻撃・排除する仕組みです。しかし自己免疫疾患では、正常な自分自身の細胞を「敵」だと誤認して、攻撃してしまいます。
円形脱毛症では、白血球の一種で細菌やウイルスを攻撃するTリンパ球に異常が起きて、毛乳頭などの正常な細胞を攻撃してしまいます。
4. 分娩後脱毛症
症状
出産後のホルモンバランスの劇的な変化により、毛髪全体において抜け毛が増える。
原因
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがあります。妊娠すると胎盤から絨毛性ゴナドトロピン(hCG) というホルモンが分泌されます。hCGはエストロゲンとプロゲステロンの産生を促します。特にエストロゲンの分泌量は妊娠前と比べておよそ100倍になると言われています。このエストロゲンは毛母細胞の分裂を促し、ヘアサイクルを伸ばす働きがあります。そのため妊娠中のヘアサイクルは成長期が長くなり、抜け毛が減ります。
ところが出産を終えて、胎盤が体外に排出されると、エストロゲンの分泌量が激減します。すると延長されていた成長期が一気に終わり、退行機と休止期をへて脱毛が増えるのです。
筆者は分娩後脱毛症がすごかったです。髪を洗った後は排水溝が抜けた髪で真っ黒でした。それでも髪が少なくなっとはあまり感じなかったのですが、抜け毛よりも回復期の「あほ毛」が大変でした。あほ毛とは、俗語で新しく生えてきた2〜3cmの髪のことで頭髪の表面からピンと跳ねでた髪のこと。押さえて髪を乾かしても、整髪料で押さえても、髪を束ねても飛び出すので(髪質による)、いつも頭髪表面がうっすらハリネズミみたいでした。あほ毛期間は、結局2年くらい続きました。
5. 牽引性脱毛症
症状
髪が引っ張られることで、毛幹(地肌から出ている部分)へのダメージや、引き抜かれるなどの物理的な負荷により髪が抜ける症状。生え際や分け目が部分的に薄くなっていることが多い。多くの場合は一過性。ポニーテール脱毛といわれることもある。
抜けた毛の毛根に白、または半透明な付着物がある場合や、毛根の先にヒゲがついている場合は、牽引性脱毛症の可能性が高いです。
原因
長期間、髪をキツく縛ったり、同じ分け目でいることで頭皮の決まった箇所に負担がかかりることによって起こります。またエクステは、編み込み方や重さが髪や頭皮へのダメージに繋がることも。髪が無理に抜けてしまうと毛根の細胞を痛めることにも繋がります。ヘアアイロンも髪を挟んで引っ張るなど、髪だけでなく頭皮のダメージにもつながりやすいです。
6. 脂漏性脱毛症
症状
シャンプーをしっかりしているのにフケが出たり、頭皮に炎症やニキビができる。脂漏性皮膚炎を発症している場合は、パサパサのフケではなく、黄色味のあるベタベタしたフケが現れます。脱毛は頭髪の全部位(炎症している部分)で起こります。頭皮だけではなく顔や首、胸、背中などに炎症が広がるケースもあり、肌トラブルとして悩む方は少なくありません。
原因
脂質の多い食生活、睡眠不足によるホルモンバランスの乱れと成長ホルモンの分泌減少、過度なストレスや飲酒、洗髪のしすぎなど複数あります。いずれも皮脂の過剰分泌により、頭皮に炎症が生じて抜け毛が起こります。他にもカビ(真菌)が関係している場合があります。カビと言っても、「マラセチア」と呼ばれる常在菌で、誰にでもあるものです。健康時には問題はありませんが、皮脂や汗をエサに増えることで炎症を起こします。
汗っかきの下の子が5歳ごろに頭皮の脂漏性皮膚炎になりかけたことがありました。毎日シャンプーしても匂いがひどく、頭皮にニキビができたりしました。実は、肌にいいだろうと赤ちゃん用シャンプーを使い続けていたことが原因だったようで、皮脂や汚れが落ち切らず頭に雑菌がわいていたようです。シャンプーを一時的に「オクト」に変えて、改善しました。
7. ひこう性脱毛症
症状
ひこうは「粃糠」と書きます。主な症状は、フケ、かゆみと脱毛。最初は少し気になる程度のフケが、だんだん通常以上に発生。頭皮に乾燥からのかゆみに加えて、毛穴辺りの炎症により「強いかゆみ」と「赤み」もではじめます。最終的には強い炎症で「かさぶた」ができ、「熱をもつ」こともあります。髪は成長しきれず、もろく、細くなると同時に前頭部から頭頂部にかけて「脱毛症状」が進行します。
原因
地肌にへばり付くように毛穴をふさぐほど発生するフケが原因です。乾いたフケになる要因として、洗浄力がつよすぎるシャンプー剤やそのすすぎ残し、頭皮質に合わない整髪料が挙げられます。必要な皮脂まで洗い流してしまって頭皮が乾燥し、あるいは刺激物が残ったままの状態なのです。そうすると頭皮に炎症が起き、髪が成長できなくなります。
頭部でも、必要なくなった頭皮や角質が剥がれ落ち新しい細胞に生まれ変わる「ターンオーバー」を繰り返していますが、頭皮環境の悪化により正常なターンオーバーが行われず、頭皮の垢であるフケが出てきてしまうのです。
ひこう性脱毛症はアレルギー体質やアトピー性皮膚炎の方がかかりやすいと言われています。そうした方はフケが発生しやすいため、過度になると粃糠性脱毛症につながっていくケースがあります。また乾燥肌の方も注意が必要です。このような症状をお持ちの方は、再発に特に気をつけましょう。
産後しばらくしてから、ひこう性脱毛症になりかけました。髪を洗っているのにフケが発生し、乾燥してとてもかゆかったです。当時はひこう性脱毛症のことを知りませんでしたが、シャンプーを見直し、潤いをチャージしつつ地肌に優しいスカルプケアに変えることで改善しました。
薄毛の改善方法
症状によって改善・治療方法が異なります。
びまん性脱毛症・休止期脱毛症
老化、ストレス、極端なダイエット、誤ったヘアケアなど、原因がひとつではなく、複数が複雑に絡み合っているため、まずは一つずつ原因を潰していきます。それでも脱毛が止まらなければ迷わずクリニックにかかりましょう。
セルフケア
食生活を見直す
栄養バランスの整った食事を心がけることで、健やかな育毛環境を整える効果が期待できます。以下は女性の薄毛に良い効果が期待できる食材です。
豆腐・豆乳製品 | 女性ホルモンの一種「エストロゲン」と似た作用を持つ大豆イソフラボンを含んでおり、ホルモンバランスの乱れを抑制する効果が期待できます。 |
野菜・果物 | 野菜や果物に豊富に含まれるビタミン類は、頭皮や育毛に必要な環境づくりをサポートしてくれます。 |
肉・魚・乳製品 | 肉・魚・乳製品に含まれるタンパク質は、髪の毛の主成分となるケラチンの生成に必要となります。また育毛に良いとされる亜鉛や鉄分などのミネラルも含まれています |
十分な睡眠をとる
睡眠不足が続くと、髪の毛の生成をサポートする成長ホルモンの分泌量の低下や、生活習慣病のリスク上昇、免疫力の低下などが起きやすくなります。健やかな頭皮環境の育成を妨げる悪影響を受けないためにも、質の良い十分な睡眠を心がけましょう。
睡眠不足対策として、日頃から体をあたためて冷えを防ぐことや、適度な運動、寝る前はアルコールやタバコ、コーヒーなどの嗜好品を控えること、睡眠前は光を発する機器(スマホやタブレット、テレビなど)を避けることなどを実施するとよいでしょう。
シャンプーの見直し
健やかな頭皮環境を育むには洗浄力が穏やかで頭皮に対する刺激が優しいアミノ酸系シャンプーがおすすめです。またシャンプー後の「すすぎ」が足りないとシャンプー成分(界面活性剤)が毛穴や頭皮に残ってしまい、頭皮トラブルを招く可能性があります。しかしながら必要最低限の皮脂まで洗い落としてしまわないため、頭皮の乾燥を防ぐためにもシャンプーの回数は1日1回が望ましいでしょう。
頭皮マッサージ
血行が悪く、硬く凝り固まった頭皮では、健康な髪は育ちません。毎日少しずつでも良いので、頭皮を優しく揉みほぐす習慣をつけてみてください。
飲酒や喫煙を控える
飲酒が薄毛を招く直接的な原因となることはありませんが、過剰なアルコール摂取による体への悪影響が薄毛を助長する可能性があるのは事実です。特に女性ホルモンはアルコールの代謝を妨げるといわれているため、飲み過ぎには注意しましょう。
また、喫煙も体に様々な悪影響を及ぼすことが知られています。正常な育毛を促進する健康的な体をつくるためにも、過度な喫煙は控えた方がよいでしょう。
脱毛症を取り扱うクリニックに行く
びまん性脱毛症の改善に有効とされる治療薬には内服薬と外用薬があります。薄毛の症状や進行状況には個人差があるため処方される治療薬は様々ですが、内服薬と外用薬を併用して治療を進めるケースもあります。使用される薬は FAGAと同様であることが多いので、次の項目をご参照ください。
女性男性型脱毛症( FAGA)
FAGAはホルモンによって引き起こされるため、どんなに頭皮ケアをしても、良い生活習慣を手に入れても、脱毛が進行してしまします。 FAGAを疑ったら早めにクリニックに行きましょう。治療薬には内服薬と外用薬があります。薄毛の症状や進行状況には個人差があるため処方される治療薬は様々ですが、内服薬と外用薬を併用して治療を進めるケースもあります。
外用薬
『ミノキシジル』
ミノキシジルはAGA治療薬として使用されている成分で、日本皮膚科学会がFAGA(FPHL)にも有効性であると認めています。ミノキシジルの外用薬は頭皮に直接塗布して使用する薬であるため、全身に影響を及ぼす副作用が出る可能性は低いといわれています。主な副作用には「初期脱毛」の可能性が挙げられます。初期脱毛は新しい髪の毛が生え変わるための脱毛であり、初期脱毛が見られてからおよそ4週間ほどで収束するといわれています。
内服薬
『パントガール』
パントガールはFAGAなど女性の薄毛治療のために服用が認められた治療薬です。ケラチンやパントテン酸カルシウム、シスチンなど髪の毛の生成に良い影響を与えるとされる栄養素が豊富に含まれており、服用することで育毛環境を整える効果が期待できます。パントガールの服用による重篤な副作用の報告はありませんが、妊娠中・授乳中などの場合は服用を始める前に医師に相談しましょう。
『ミノキシジル』
ミノキシジル内服薬は有効性が高い治療薬といえますが、副作用としては外用薬同様に「初期脱毛」や「多毛症」が起こる可能性があります。多毛症は体毛が増えてしまうという女性にとって悩ましい副作用ではありますが、ミノキシジルの使用を中止することで改善されます。それ以外にも心血管系の副作用を生じることもあるため必ず医師の処方の元で使用しましょう。
円形脱毛症
軽度の場合は自然に治ることが多いですが、改善が見られない場合は早めに皮膚科やクリニックを受診しましょう。患者の年齢や病変部の範囲、病気か急性かで治療方針が異なります。もっとも推奨されているのは「局所免疫療法」と「ステロイド療法」です。下記表のように他の治療も選択肢として存在します。医師と相談して自分に合った治療法を見つけることが大切です。セカンドオピニオンも活用しましょう。
局所免疫療法 | 脱毛部位に軽いかぶれを起こしながら治す治療法。 |
ステロイド療法 | 外用薬・内服薬・局所注射の3つの種類があり、まずは外用薬を投与して経過を観察する。急速に進行する症例では、期間を決めて内服薬を用いた治療を検討する。局所注射の選択肢もあるが、脱毛が広範囲に及ぶ場合は注射の回数も増えることから、その他の治療と併用するのが一般的。 |
経口 JAK 阻害剤 | 免疫システムの異常な働きを抑える薬を内服する治療法。 |
冷却療法 | 脱毛部位を冷却し、免疫反応を抑える治療法。液体窒素などを用いて脱毛部位を刺激する。一時的だが、冷却中は皮膚がピリピリしたり赤みが生じる。副作用が少なく、治療自体も簡便に行えるのが特徴。 |
ミノキシジル外用療法 | 血管拡張作用のあるミノキシジルには、頭皮に栄養を届けることで発毛を促す効果があると考えられている。 円形脱毛症治療においては十分な効果が実証されていないが、海外の診療実績などもふまえ併用療法として行う場合がある。 |
塩化カルプロニウム | 血管拡張作用によって機能が低下した毛包やその周辺の血管にはたらきかけ、発毛を促進します。脱毛症に対する治療の歴史が長く、市販の発毛促進薬にも配合されることが多い。 |
セファランチン | 抗アレルギー作用や血管拡張、血液幹細胞を増殖させるはたらきがある。また血管を広げることで血流が促され、頭皮に栄養を届ける効果があるとも考えられている。 |
グリチルリチン | 炎症やアレルギーを抑えるお薬。副作用が少ないことから併用療法として行うことが推奨されている。円形脱毛症以外では皮膚炎や口内炎、慢性肝炎における肝機能異常の治療にも用いられる。 |
抗ヒスタミン薬 | アレルギーの薬として知られる抗ヒスタミン薬だが、円形脱毛症においては毛包周囲にリンパ球が集まっていくのを阻害する可能性が報告されている。 |
紫外線療法 | 紫外線を皮膚に照射して、毛包周囲に浸潤している免疫細胞の働きを抑える。 |
分娩後脱毛症
特に治療はいりません。出産後2ヶ月ほどから始まり、1年ほど経つと、多くの方は少しずつ元の状態に近づいていきます。しかし、産後は多忙な育児による睡眠不足や栄養バランスの乱れなど、脱毛が増えるきっかけがたくさんあるのも事実です。産後の脱毛が長期に渡る場合はクリニックの受診をお勧めします。
牽引性脱毛症
よほど重症化していなければ毛量が自然に戻ることが多いです。髪の結い方をゆるめたり、分け目を定期的に変えるよう心がけてみてください。
- 髪型を変える
- エクステなどはあらかじめ期間を決める
- 頭皮マッサージを行う
それでも脱毛箇所が気になる場合は、クリニックで育毛剤やビタミン剤を処方してもらうことも可能です。
脂漏性脱毛症
脂漏性皮膚炎や脂漏性脱毛症になったら、皮膚科や脱毛症を扱うクリニックで治療を受ける必要があります。代表的な治療法としては、ステロイド(炎症を抑える)外用薬、ステロイド入りシャンプーなどが挙げられます。
また、マラセチアが原因の場合は、マラセチアを殺菌する抗真菌薬の外用薬を使うことが一般的です。
そのほか、頭皮環境を整えるために、抗生物質、ビタミンの飲み薬や、ローションなどを使ったり、かゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬を使ったりすることもあります。
また、医療機関での治療だけでなく、自宅でのセルフケアも大事です。脂質の少ない食生活と、正しいシャンプーを心がけてください。頭皮を清潔に保つことも大切です。
セルフケア
食生活を見直す
食事では、脂質の摂りすぎを避けましょう。また、頭皮の刺激とならないよう、からい食べ物、コーヒー、アルコールも控えることをおすすめします。また頭皮と頭髪に良いと言われている栄養を積極的に摂るのもおすすめです。
たんぱく質 | 髪のもととなる | 鶏のささ身・イワシ(丸干し)・卵・きな粉・チーズなど |
亜鉛 | 髪のもととなる | 牡蠣・豚レバー・牛赤身肉・卵・カシューナッツなど |
ビタミンB2 | 皮脂分泌をコントロールする | のり・アーモンド・わかめ・キャビア・からすみ・青汁(ケール)・うなぎなど |
ビタミンB6 | 皮脂分泌をコントロールする | まぐろ・カツオ・ドライトマト・豚肉・ピスタチオ・青汁(ケール)など |
適切な洗髪
洗髪は1日1回にしましょう。洗いすぎると皮脂が取り除かれすぎて乾燥し、逆に皮脂分泌が活発になってしまうことがあります。
また、強くこすったり爪をたてたりすると頭皮がダメージを受け、症状が悪化することがあるので、指の腹でやさしく洗ってください。
シャンプーの前のブラッシングと予洗い(髪だけでなく頭皮もお湯でゆすぐ)をしっかりすると、それだけである程度汚れが取れます。そして、シャンプーは、十分にすすぐことも大事です。
シャンプーを見直す
脂漏性皮膚炎・脱毛症になっているときは、頭皮環境が悪くなっているので、シャンプーを見直しましょう。以下のような、抗真菌成分が入っている薬用シャンプーがおすすめです。
ミナコザール亜硝酸塩 | サリチル酸 | オクトピロックス | ケトコナゾール | ||||
効果 | 真菌の増殖を抑える | 古い角質や余分な皮脂を溶かして、菌の増殖を抑える、消炎作用 | 殺菌・抗酸化作用があり、フケやカゆみを抑える | 抗真菌作用 | |||
代表的な商品 | コラージュフルフルネクストシャンプー (持田ヘルスケア) | ノブ ヘアシャンプーM (常盤製薬) | オクト薬用シャンプー (ライオン) | *処方箋が必要です | |||
メディクイックH 頭皮のメディカルシャンプー (ロート製薬) | KADASON (ワイズ製薬) | ソフトインワンシャンプー スッキリデオドラントタイプ (ライオン) |
頭皮を傷つけない
炎症があるとかゆみを感じることがあります。かいたり、シャンプー時に過剰に力を入れたりすると、余計かゆみや症状が悪化するため注意してください。
ひこう性脱毛症
ひこう性脱毛症も、皮膚科や脱毛症を扱うクリニックで治療を受ける必要があります。まずは炎症を鎮めるためステロイドの外用薬や抗生物質が使用されます。マラセチア菌の繁殖を抑える抗真菌薬(外用)、つらいかゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬が併用されることが多いようです。
頭皮環境を整えるために、ビタミンの飲み薬や、ローションなどを使うこともあります。
またひこう性脱毛症の場合も、薬だけに頼らず並行してセルフケアを行いましょう。
セルフケア
ひこう性脱毛症の根本原因はまだはっきりしていません。しかし、ホルモンバランスや自律神経の乱れが関係していると考えられており、肌の敏感なアレルギー体質の方に発症の確率が高くなっています。
シャンプーを見直す
洗髪時に髪の健康に必要な皮脂まで洗い流すことがないように、洗浄力が穏やかな低刺激であるアミノ酸系やベタイン系のシャンプーが良いでしょう。また炎症を抑えたり殺菌成分が入ったシャンプーもおすすめです。
グリチルリチン酸 | イソプロピルメチルフェノール | O-シメン-5-オール | |
効果 | 炎症を抑える作用や血液の流れを良くする | 雑菌の繁殖を抑える殺菌成分 | フケや頭皮のかゆみ、赤みを防ぐ効果が期待できる殺菌成分 |
代表的な商品 | キュレルシャンプー (花王) | ESMO-EX薬用スカルプシャンプー (ドクターシーラボ) | 薬用スカルプシャンプーUL•OS (大塚製薬) |
ミノン薬用ヘアシャンプー(第一三共) |
生活習慣を見直す
ホルモンバランスを整えて新陳代謝を正常に機能させるには、食生活の改善・質の良い睡眠・適度な運動の3点を心掛けましょう。
⚫︎食事
亜鉛 | 髪のもととなる | 牡蠣・豚レバー・牛赤身肉・卵・カシューナッツなど |
ビタミンE | 抗酸化作用、細胞や血管の健康を維持する効果。また、血流を促進する働きがある | アーモンド・乾燥いちじく・すだち・鮎・ウニ |
ビタミンC | コラーゲンの生成を促進、新陳代謝や細胞の働きを促進 | パプリカ・アセロラ・キウイ、いちご、柑橘類 |
⚫︎睡眠
成長ホルモンが最も分泌される22時から翌2時までを含めた質の良い睡眠が大切です。
⚫︎運動
短時間でも継続して有酸素運動すると、育毛効果のアップが期待できます。
女性の薄毛治療は保険対象?
薄毛の治療は、ある程度の期間 治療を続けないといけないため保険が効くかどうかが気になりますね。実は保険が適用されるかどうかは脱毛の種類によって異なります。
びまん性脱毛症・慢性休止期脱毛症:適用外
老化、ストレス、極端なダイエット、誤ったヘアケアなどによって引き起こされる薄毛であるため、治療は美容目的として分類されます。このため保険適用外となります。また、医療費控除も対象外となります。
女性男性型脱毛症( FAGA):適用外
FAGAをはじめとする薄毛が法律によって病気とは認められていないためです。日本では公的医療保険制度の対象としてケガや病気などをあげています。薄毛は生命にかかわるような症状ではないため、保険は適用されず自由診療が原則となっています。男性のAGAも同様です。
円形脱毛症:保険適用(例外あり)
2020年4月より保険が適用されました。ただし保険が適用される治療法と適用されない治療法がありますので注意してください。事前にかかる皮膚科やクリニックに確認することをおすすめします。
治療法 | 保険適用の有無 | 理由 |
---|---|---|
局所免疫療法 | × | かぶれを引き起こすために使用されるSADBEやDPCPという化学物質は医薬品として定義されていないため。 |
ステロイド療法 | ◯ | 自己免疫疾患の治療として保険が適用される。 |
経口JAK阻害剤 | ◯ | 2022年にバリシチニブ、2023年にリトレシチニブの使用に保険が適用されるようになった。 |
抗ヒスタミン薬(内服) | × | 円形脱毛症治療においては現状十分な効果が実証されていないため保険適用外。 |
セファラチン(内服) | ◯ | 自己免疫疾患の治療として保険が適用される。 |
グリチルリチン(内服) | ◯ | 自己免疫疾患の治療として保険が適用される。 |
塩化カルプロニウム(外用) | ◯ | 自己免疫疾患の治療として保険が適用される。 |
ミノキシジル(外用) | × | 円形脱毛症治療においては現状十分な効果が実証されていないため保険適用外。 |
冷却療法 | × | 皮膚には保険適用になるが、円形脱毛症治療においては現状十分な効果が実証されていないため保険適用外。 |
紫外線療法 | △ | 2020年にNBUVB療法とエキシマライト/レーザー療法については保険適用となった。しかしUVA療法は保険適用外のままのようです。 |
分娩後脱毛症:適用外
基本的には一時的な症状のため、保険の適用はされません。
牽引性脱毛症:適用外
物理的刺激の原因を除去することをまず優先され、保険は適用されません。
脂漏性脱毛症:保険適用
皮膚炎(頭皮の皮膚炎)として診断された場合は、その治療にのみ保険が適用されます。
ひこう性脱毛症:保険適用
皮膚炎(頭皮の皮膚炎)として診断された場合は、その治療にのみ保険が適用されます。
女性の薄毛(脱毛症)の半分以上は保険適用外とは、正直ショックですね。薄毛はQOLに関わってくる人もいるのに…
女性の薄毛 治療はいくら?
女性でも男性でも、薄毛治療は美容目的と判断されてしまうことが多いようです。つまり保険が効かない脱毛症治療がたくさんあることが分かりました。では実際に治療をしようとしたら、いくらくらいかかるのでしょうか?費用相場をリサーチしてまとめてみました。
保険適用外 (投薬は1ヶ月分、その他の治療は1回分として換算) | 保険適用 (診察料含む3割負担の場合) | ||
びまん性脱毛症・慢性休止期脱毛症 女性男性型脱毛症( FAGA) 分娩後脱毛症 牽引性脱毛症 | 診察料/カウンセリング費 | 0円~5,000円 | – |
内服薬 | 4,000円~15,000円 | – | |
外用薬 | 10,000円~15,000円 | – | |
メソセラピー(注射器やレーザーなどを使って、治療部位に薬剤や有効成分を直接注入する治療法) | 30,000円〜100,000円 | – | |
その他クリニック独自の発毛治療等 | 30,000円〜150,000円 | ||
円形脱毛症 | 局所免疫療法 | 2,000円〜70,000円 | – |
ステロイド注射(1回/月) | – | 1,500円〜3,000円 | |
内服薬 (セファラチン、グリチルリチン等) | – | 1,500円〜3,000円 | |
内服薬 (抗ヒスタミン) | 6,500円〜10,000円 | – | |
外用 (ミノキシジル) | 10,000円~15,000円 | – | |
外用 (塩化カルプロニウム) | – | 1,500円〜3,000円 | |
紫外線療法 | – | 1,500円〜3,000円 | |
冷却療法 | – | 2,000円〜4,000円 | |
脂漏性脱毛症 | 皮膚炎としての治療 | – | 1,500円〜3,000円 |
ひこう性脱毛症 | 皮膚炎としての治療 | – | 1,500円〜3,000円 |
保険が適用されない自由診療はクリニックによってだいぶ差があることが分かりました。いずれにせよ保険診療と自由診療かでかなり治療費が変わってきますね…
上記の料金はあくまで目安です。脱毛症の治療は最低半年ほどかかるためランニングコストも考慮しなくてはなりません。クリニックの中には薬のサブスク料金を設定し割安にしてくれるところもあります。
またジェネリック医薬品を使用するかどうかで価格が変わってくることもあります。さらにオンライン診療を利用するとより安く済む場合があります。
脱毛症の原因は様々な要因が絡んでいることが多く、治療においても効果を最大限に出すため複数の治療法併用することがあります。保険治療と自由診療が混ざる場合もあるので注意が必要です。例えば、円形脱毛症でステロイド注射(保険治療)をしようとしたら、発毛効果のあるミノキシジル(自由診療)混合の薬剤しか取り扱っておらず、「ミノキシジル混合ステロイド注射」として自由診療になってしまう場合があります。
薄毛と向き合い、クリニックをうまく活用する
女性の薄毛の原因は、単純に加齢によるものだけではなく、生活習慣やホルモンバランス、ライフスタイルなど様々な要因が複雑に関係しています。大切なのは薄毛を放置しないこと。他の病気と同じで、薄毛においても早期発見・早期治療が大切です。早期発見・早期治療より良い改善を見込めるでしょう。
薄毛が気になたら、必ずしも皮膚科やクリニックで治療をしなくてはならない訳ではありません。セルフケアだって治療の一つです。日頃から食事を含めた生活習慣・頭皮ケアに配慮することで、薄毛や薄毛の進行を遅らせることができるでしょう。
それでも薄毛が進むのならクリニックに行きましょう。発毛クリニックはなんとなくハードルが高そうですが、無料でカウンセリングをしてくれるところもあります。そういったクリニックを活用して、自分の薄毛の進行度を把握できれば、セルフケアを続けるのか、医療に頼るのか、今やるべきことが見えてくるでしょう。
薄毛においても、現状把握→課題抽出→問題解決が大切!
正直、自分の薄毛の現状を知るのは勇気がいりますが、悩んでいる時間がもったいないです。やれることから行動に移しましょう!
なお筆者調べですが、クリニック名称に「AGA」とついているクリニックが多数ありましたが、別にAGA(FAGA)だけを取り扱っているというわけではなく、発毛に関する治療全般を行っているところがほとんどです。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。薄毛に悩む全ての女性の参考になれば幸いです!
コメント